バリ島での就労ビザ規則が2018年7月に変更されました
2018年7月1日にバリ島を含むインドネシアでの外国人就労に関する規則が大幅に変更されました。
この変更は、2018年3月26日に発令された大統領令第20号に基づき2018年7月1日に発令された外国人労働者利用手順に関する労働大臣規定2018年第10号によるものです。
今回は、この変更についてポイントを説明したいと思います。
なお、今回の記事は、JETRO(日本貿易振興機構)がWebサイトで報告している文献並びにインドネシア投資調整庁(BKPM)や入国管理局発行の資料を基に、筆者がまとめたもので、一部誤訳や解釈の誤りなどがあるかもしれません。
インドネシアへでの投資、会社設立、外国人雇用などは、必ず専門の機関へのご相談、ご確認をお願いいたします。
外国人の労働許可、就労ビザ規則変更のポイント
今回の規則変更で最も大きなポイントは、すべての手続きがOSS(Online Single Submition)と呼ばれるオンラインシステムにより、申請者が直接申請を行い、またジャカルタの一元管理による許可、承認となったことです。
従来は各地方に任せていた許認可を中央に集中させ、さらにオンライン化することにより、
- 許認可時間の大幅短縮
- 中間業者(エージェント)の排除による、不正の撲滅
- Webサイト上での手続き、許認可の可視化、透明化
が見込めるということです。
私たち外国人のとっても大変良いことかと思いますが、以下のような問題点も考えられます。
- 申請手続きが難しい(専門知識が必要)
- 必要条件から外れた案件は許認可されない
- ネット環境に依存する
特に問題となることは、外国人雇用に必要な条件に外れた雇用への対応です。
いかに必要条件を紹介しますが、この条件に当てはまらない雇用は原則できないという事になります。
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外国人雇用に必要な条件
インドネシア国内での外国人の労働には労働大臣の許可が必要で、許可なく労働した場合は法律違反となります。
そして、この労働大臣の許可を得るためには、雇用主は以下の条件を満たす必要があります。
- 外国人雇用計画書(RPTKA)の策定と承認
- 外国人労働者雇用保証金(DKP-TKA)の納付
DKP-TKAは以前はDPKKと呼ばれていました。 - 暫定居住ビザ(Vitas)の取得
- 外国人の有する専門技術や知識を移転するインドネシア人の指名と教育
- 外国人労働者へのインドネシア語教育
- 外国人労働者の国家労働社会保障(BPJS-TK)の加入
また、外国人労働者には、以下の条件が必要とされています
- 就労予定の役職要件に応じた学歴
- 役職に従った5年以上の実務経験
- インドネシア人への専門技術、知識の移転
- 納税者番号(NPWP)の取得
- ITAS(暫時居住許可証)の取得
外国人労働者雇用の問題点
上記のように外国人雇用に関する条件が明示されたことにより、外国人雇用で以下のような問題点があります。
経営者(取締役、監査役)については出資者(株主)であり外国人労働者ではないので、RPTKAの提出はDKP-TKAの納入は必要なく、ビザ発給、ITAS取得に関しても優遇されています。
ただし、取締役でも実務を行うものは労働者とみなされますので、外国人労働者への条件などが適応されます。
外国人労働者については、インドネシア人への専門技術、知識の移転が目的ですので、スキルや学歴、労働期間などについて厳格な規定があります。
まず、外国人労働者がつける役職はマネージャーもしくはアドバイザーとなります。
マネージャーは大卒以上でなければ、まず労働許可は出ないそうです。
また、60歳以上の労働許可も出ないと言われています。
アドバイザーですが、学歴に関しては制限はありませんが、労働許可は6か月しか出ません。
そのため、ビザも6か月限定で、延長はできないということです。
つまり、外国人が長期にわたりバリ島で仕事をするためには、マネージャー以上の役職でなくてはならず、マネージャーとして労働許可を得るためには
- 大卒以上の学歴
- 5年以上の実務経験
が最低でも必要ということです。
さらに、前回の「バリ島で起業、費用(資本金)はいくらかかるのか?」でも説明しました通り、会社が外国人労働者を雇うには
- 資本金が10M(100億ルピア)以上の外資株式会社(PMA)
- 資本金が1M(10憶ルピア)以上の内資株式会社(PMDN)
でなくてはいけません。
外国人労働者雇用の手続き
それでは、OSSによりオンライン化となった外国人雇用の手続きについて説明します。
特に大きな変化は、IMTA(労働許可)が廃止されました。
本来は、完全廃止を計画したのですが、実務上不可能という結論に達し雇用通知(Notifikasi)という書類に変わりました。
また、ITASの発行手続き(顔写真撮影や指紋採取)も入国港で行い翌日にはITASが発行されるということです。
<手順>
- RPTKAを策定しOSSにアップロードし、労働省の許可を受ける
- RPTKAに記載した外国人労働者の個人データーをアップロードする
- OSSよりNotifikasiが発行される
- DKP-TKAを指定銀行より振り込む
- 入国管理総局にNotifikasiとDKP-TKA納入証明書をオンラインで提出する
- 入国管理総局が暫時居住ビザ(Vitas)を発行する
- 労働者が外国の領事館にてVitasを取得する
- インドネシア入国港(空港)にてITASを取得する
これら一連の手続きですが、すべてオンラインで行うことにより、RPTKAアップロードからITAS取得まで最短7日間で行えるようになりました。
ただし、現時点ではまだ実務が追い付いていないので、Notifikasiではなく、いまだにIMTAが発行され、また空港でのITAS取得は実現しておりません。
さらに、オンラインシステムが導入されたばかりのため、各所でトラブルが発生し許認可にかえって時間がかかっていることも事実です。
今後、時が進むにつれスムーズな業務進捗になっていただくことを切に祈ります。
まとめと所感
今回の規則改定の大きなポイントは、すべての手続きがOSSという統一オンラインシステムで進められることにより、許認可のスピードアップと透明化が進むことです。
これまで時間がかかった労働許可やKITAS取得が最短7日で行えるようになり、また不正な金銭のやり取りもなくなるということで、私たち外国人にとっては大変歓迎すべきことでしょう。
しかし、その反面、例えば新卒者や高卒者の長期雇用などこれまでグレーゾーンだった案件の認可が実質不可能になってしまったことが、問題点と言えるでしょう。
また、経営者と労働者の区分も今以上に厳格化され、経営者といえどもRPTKAを申請していなければ実務はできないということです。
すでにIMTAやITAS(KITAS)を取得して、すでにバリ島で仕事をしている外国人労働者に関してですが、いきなりIMTAやKITASが停止ということはないと思います。
延長もできるかと思います。
ただし、ITASの延長期限が切れて新たに労働許可、就労VISA、ITASを取得するとなった時、労働者条件が厳格に規定される可能性はあります。
その場合の対応も今から検討しておいた方がいいかと思います。
今回の記事作成に関しては、以下のサイトを参考にさせていただきました。
この記事にご興味がある方は、以下のサイトを一度ご覧になられることをお勧めします。
- 外国人就業規制・在留許可、現地人の雇用(JETRO)
- 外国人労働者利用手順に関する労働大臣規程2018年第10号(ジャカルタjapanクラブ)
- Tenaga Kerja Asin On-Line(外国人労働者オンラインシステム)
- Indonesia Imigrasi(入国管理局オンラインシステム)
- BKPM Japan(インドネシア投資調整庁日本事務所)
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