この記事はバリ島移住者がインドネシアの国民医療保険BPJSを利用する場合の条件や補償範囲などについて解説した記事です。
バリ島移住者が使える医療保険として、民間の保険会社が発売している現地医療保険をおススメしています。
ただ、民間の保険会社の商品ですので、どうしても保険の掛け金が高額で、費用負担が大きい。
日本の国民健康保険のように、インドネシアに暮らす人が安心して使える安い保険が欲しいですよね。
実は、インドネシアにも日本の健康保険に近い医療保険があります。
それがBPJS(Badan Penyelenggara Jaminan Sosial)と言われる社会保障機関です。
BPJSは原則インドネシア国民ならだれでも安価な掛け金で加入でき、医療費は全額補償となっています。
しかし、外国人移住者にとってこのBPJSはちょっと使いづらい。
その理由は、外国人の利用制限と補償限度のためなのです。
今回は、このインドネシアの医療保険BPJSについて、その仕組みや補償範囲、外国人利用の条件などを紹介します。
この記事を読んで頂ければ、なぜ外国人はBPJSが使いずらいのかご理解いただけます。
その事により、移住生活での医療保険選択の参考になると思います。
今後バリ島に移住したいが、医療保険をどうしようかお悩みの方は、ぜひご一読ください。
BPJS以外の医療保険やバリ島の医療体制などについて以下の記事でまとめて解説しております。
バリ島の医療体制や保険制度にご不安のある方はぜひご一読ください。
バリ島移住での医療、保険、病気、健康管理
目次
インドネシアの医療保険BPJSとは
BPJSとは、2014年に発足したインドネシアの新社会保障機関の事です。
BPJSの制度
BPJSには、日本の健康保険に該当するBPJS-Kesehatanと、労災保険に該当するBPJS-Ketenagakerjaanがあります。
BPJS-Kesehatanは原則、インドネシア国民及び外国人の一部が加入でき、BPJS-Ketenagakerjaanはインドネシアの会社で働く人が加入できます。
どちらの保険も保険の掛け金は安価で、かつ会社に勤めている方なら保険金の一部を会社が負担する決まりとなっています。
BPJSは、原則医療費を全額保証。
Kesehatanの場合は、保険機構が直接医療機関に支払いをするので、キャッシュレス治療。
Ketenagakerjaanは、一旦本人が医療費を立て替えた後、保険機構に請求となっています。
BPJSが使える病院
日本の場合、保険が使える病院ならどこでも診療してもらえますが、インドネシアの場合は日本とちょっと違っています。
ホームドクター制度
BPJSに加入する際、ホームドクター病院を指定します。
指定できる病院はその地区で決まっていて、その中から、自分でいいと思った病院を指定します。
多くの場合、その地区のプスケスマス(公立の病院)が推薦されます。
指定した病院の名前はBPJSの保険証に記載されます。
病気や怪我をした場合、最初にそのホームドクター病院で診察。
ホームドクター病院が処置できればそのまま処置しますが、手に負えないときには近くの専門医や大きな病院を紹介してくれます。
その場合、ホームドクター病院の紹介状を持って、専門医や病院に行きます。
つまり、直接専門医や病院に行っても保険が使えないという仕組みです。
緊急の場合は直接病院に
このホームドクター病院ですが、24時間対応してくれない所があります。
プスケスマスですと、08:00~17:00位が診察時刻になります。
では、急な病気や事故、怪我の場合はどうするのでしょうか?
病院にはIGUという救急診療施設を備えている所もあります。
IGUがある病院の中でもBPJSが使える病院があるので、救急の場合はこのような病院に駆け込みます。
この場合は、ホームドクター病院の紹介状がなくても診察は受けられますが、基本的に一般医での診察となります。
病院によってはBPJSが使えない
病院の中にはBPJSが使えない所があります。
特に、インターナショナルホスピタル(国際病院)と言われている、外国人向けの病院のほとんどはBPJSは使えません。
そのような病院に行く方は、金銭的に余裕があるのでBPJSは不要と考えられているのでしょうかね?
外国人がBPJSを使いずらいという理由
このインドネシアの医療保険、外国人にとってとても使いずらい保険なのです。
ワーキングビザでの滞在者以外加入できない
外国人は基本的にワーキングビザでの滞在者しかBPJSに加入することができません。
これは、外国人の場合、所属する会社を通じてしか加入申請ができないから。
その為、リタイアメントビザ、学生ビザでの滞在者はBPJSを使えないのです。
投資家ビザでの滞在者で投資先の会社で仕事をしている方は、会社を通じてBPJSへの加入は可能です。
婚姻ビザで滞在している方ですが、パートナーがBPJSに加入していれば、その方の扶養家族としてBPJSに加入することができます。
BPJS発足当時はKITASがある外国人ならだれでも加入できました。
しかし、いざ運用を始めてみると補償費の負担が大きく財政的に厳しくなったので、外国人に対しての利用制限が入ったそうです。
補償レベルが低い
BPJSでの補償レベルはローカルレベルなので、外国人移住者にとって低いと感じます。
一般医による診察
医師の診察や治療は原則一般医が担当します。
高度な治療技術がある専門医での治療は、一般医からの紹介状がなければ受けられません。
直接専門医の治療が受けたい場合は、別途費用負担が発生します。
ジェネリック医薬品
治療に使われる医薬品は、安価なジェネリック医薬品になります。
ジェネリックでも聞かないという事はありません。
簡単な病気なら十分対処できますが、高度医療が必要な場合は対応できないのです。
病室は大部屋
入院する場合の病室は、2~6人の大部屋となります。
インドネシア人の入院に対する考え方は日本人とちょっと違うので、外国人が大部屋に入院すると、結構なストレスとなります。
もし、個室での入院が希望となると、BPJSは使えなくなります。
高度医療には対応できない
医療費は全額補償のうたい文句で始まったBPJSですが、実際運用が始まると財政負担が大きくなり、問題となりました。
その為、現在では補償医療費の上限が決められています。
ガン、心臓病、脳溢血など高度医療についてはBPJSは補償してくれません。
また、入院についても1日のリミットがあるため、個室などは使えないのです。
バリ島移住者のBPJS利用法
このようにバリ島移住者にとって使いずらいBPJSですが、実際移住者はどのように利用しているのか、紹介します。
就労者はBPJSと民間医療保険の2つを利用
会社は雇用者をBPJSに加入させなくてはいけないという規則があります。
そのため、ワーキングビザを取って働いている就労者はBPJSに加入しています。
しかし、BPJSだけでは医療保障に不安があるため、別に民間の医療保険も加入しています。
風邪や腹痛といった、簡単な病気にはBPJSを使い、BPJSではカバーしきれない高度医療や入院対応には民間の医療保険を使うようにしています。
本来であれば民間の医療保険だけでもいいのですが、法律でBPJSに加入しなくてはいけないので、使えるものは使っておこうという考えですね。
非就労者は民間の医療保険が頼り
リタイアメントなど会社勤めをしていない移住者はBPJSに加入できないので、民間の医療保険頼りとなります。
民間と言っても、日本やアメリカなど外資の保険会社がほとんど。
ちょっと保険の掛け金は高いのですが、安心のために加入をしています。
インドネシアの民間医療保険についての詳細は以下の記事を参考にしてください。
バリ島の海外移住者向け医療保険
実際にBPJSを使ってみた
私が過去BPJSを使い受けた医療についてその実態をご紹介します
病気の治療
風邪をひいたとき(軽い病気の時)
風邪をひいたとき、ホームドクターの所に行って診察してもらいました。
薬を出してもらいましたが、ほとんどが薬局で手に入るような薬で、お医者さんの所に行かなくても、直接薬局で相談してもよかったのかなと思いました。
デング熱の時(重病の時)
過去2回デング熱をやりましたが、この時はホームドクターを飛ばして直接大きな病院に行きました。
受付で、症状を告げ、緊急であることをアピールし、BPJSの保険証を出して保険で診察してもらうようにしました。
受付後、IGUで血液検査などを受け、デング熱であることが判明し薬を出してもらいました。
この時点ではまだ入院の必要がなかったのでBPJSで対応してもらいましたが、この後入院が必要になった時点で、民間の医療保険(プレデンシャル)に切り替えました。
(PBJSを使うと大部屋での入院となるため)
怪我の場合
以前、クタで交通事故にあい、事故現場から最も近いBPJSの病院に担ぎ込まれました。
IGUに入り、治療をしてもらいました。
けがの程度は、転倒した際、マフラーで足をやけどしただけでしたので、入院などは不要。
治療費を清算する際、BPJSを使いたいと申請しましたが、交通事故の場合、警察の事故証明が必要と言われたので、BPJSは使わず現金精算してきました。
治療費はトータルRp850.000(約7800円)でした。
入院をした場合
過去3回ほどバリ島の病院に入院したことがあります。
2回はデング熱で、この時は民間の医療保険(プレデンシャル)を使い、もう1回は疲労による入院でこの時はBPJSを使いました。
もちろん、どちらもキャッシュレスで医療費はすべて保険負担です。
民間の医療保険を使った入院
デング熱という事で、入院が長期化すると思い、民間の医療保険利用にしました。
まず病室ですが、VIPルームという個室。
部屋はクーラーが効いていて、衛星放送が入るテレビも完備。
室内にはシャワーと洋式のトイレがあり、付き添いの方のベットもありました。
食事は、病院食ですが3食でて、さらに10時と3時にはおやつも出ました。
部屋はそれほど広くありませんが、個室なのでプライバシーは確保されていました。
BPJSを使った入院
謎の発熱と体のだるさで病院に行ってきたとき、点滴を打つから入院していけと言われ、1日だけ入院しました。
(2019年12月の体験で、今にして思えば初期のコロナ感染症だったかも?)
普段なら入院する場合、民間の医療保険を使ってVIPルーム(個室)に泊るのですが、1日だけという事なのでBPJSで対応してもらいました。
入院した病室は3人部屋。
私を含めて2名が使っています。
まず病室はこの病院の中で一番古いんじゃないかと思えるほどの古い部屋。
クーラーはなく、扇風機のみ(乾季で良かった)
テレビはあったけど、映らない・・・
窓はロープで開かないようにしてあり、天窓には蜘蛛の巣が・・・
トイレは、ローカル仕様(インドネシア式)
それと、インドネシアの場合、病人の親族が一緒に病室に泊ります。
夜、トイレに起きたとき見たら、隣の患者さんの親族の方が床に毛布をひいて寝ていました。
こうやって、親族が泊まりこむのが前提なのか、病室にはナースコールがありません
入院したのが夜遅かったので、夕食は出ずに、翌日朝食と昼食が出ました。
病状により、食事はコントロールされているとは思うのですが、VIPルームよりレベルは低いかと。
もちろん、10時のおやつは出ませんでしたけど。
ベット間はカーテンで仕切ってありますが、朝になったらカーテン全開
ついでに病室のドアも、カーテンも全開とプライバシーは全くなし。
はっきり言って1泊が限界でした。
インドネシア医療保険BPJSまとめ
BPJSは、掛け金は安く、治療費は全額負担と理想的な保険です。
ただし、金銭的な条件が良い反面、治療レベルは日本人には満足できないものだと思います。
- 治療は基本一般医が行うので、あまり専門的ではない
- 薬は安いジェネリックで普通の薬局でも手に入りそう
- 病室はプライバシーのない大部屋で日本人には無理
また、鳴り物入りで始まった保険制度ですが、特に金銭面で問題も出ているようです。
- 病院に支払われる治療費は定額なので、やる気がない病院もある
- まだ、全国100%対応しきれていない
- 高額な高度医療(ガンや心臓病、難しい手術など)は保険適応外となる
- 外国人はワーキングビザでの滞在者しか加入できない
金額面はとても素晴らしい制度ですが、まだ現場が追い付いていないというのが実感です。
バリ島移住者、特に健康面に不安のあるリタイア層は、医療保険の加入が必須となります。
今回ご紹介したBPJSは、医療レベルが満足いくものではなく、またリタイアメントの方は加入できませんので、民間の医療保険をご検討ください。
また、ワーキングビザで滞在されている方はBPJSへの加入ができます。
しかし、その医療レベルは満足いくものではありませんので、BPJSと民間の医療保険のダブルで対応されるのがいいと思います。